スーザン・ピーチ展「EVERGLAZE」
studioJにおける11月の展覧会としまして、スーザン・ピーチ展(Susan Pietzsch)”EVERGLAZE“を開催いたしました。
studioJにおいては2005年以降、2度目の個展になりました。
スーザン・ピーチは1969年にドイツのフライブルクに生まれました。貴金属の細工技術を習得した後、 ヴィスマール大学でノイマイヤー教授の指導の下、装飾デザインを学びました。 1996年から数多くの国際的な展覧会で作品を発表し、現在はバルト海沿岸のグラスハーゲン、ベルリン、東京に拠点を置いて活動しています。
スーザン・ピーチは自身の創作活動と平行して、1997年から国際的な展示プログラムを継続的に展開し、「Schmuck2(シュムック)2」を結成しました。 それは「装飾」というテーマを、今までとは異なった自由な捉え方に焦点を当て、そこにアート、デザイン、芸術理論などの文化的アプローチを引き合わせていきました。 今年6月から8月にかけては、東京の国立新美術館SFTギャラリーにおいて、彼女の企画による「XS-extra small」が開催されました。
「装飾か、それとも芸術か?」スーザン・ピーチは19世紀から存在する、この装飾品と造形芸術の区別を取り払おうとします。 そのため彼女の作品は装飾と芸術の両方の領域に分類され、作品自体、これまでのように装飾品として身に付けることもできますが、 それ自体がオブジェやインスタレーションといった芸術です。
彼女の作品には、高価な貴金属や宝石が素材として使われることはほとんどありません。 むしろ身近にあるものや、価値の低いもの、例えば磁器、プラスチック、砂糖といった一見「つまらないもの」にこそ装飾的な一面を見出しています。 スーザン・ピーチのこの原則は、今度の展覧会「EVERGLAZE」(エバーグレーズ、造語で、ずっと光沢のあるというような意味)の作品にも応用されています。
“ Pierced for threading or stringing” ―穴を開け糸を通す、真珠のアクセサリーに代表されるこの形態は、ほとんど全ての彼女の展示作品に用いられています。 マーブルチョコレートや砂糖菓子など、私達の身の回りにある小さな球状のものに穴を開けていく作業には、多くの時間と集中力が必要とされますが、 それを長く繋ぎ合わせてネックレスにしたり、出来上がったオブジェをその素材が入っていたパッケージで覆ったりしています。
また、マーブルチョコレートの表面のコーティングを削って模様を浮き出させることもあります。 壊れやすい素材のために時間を無駄にすることもありますが、時間という要素は彼女の作品の中ではとても大切な役割を演じています。
半透明の砂糖の中に、小さな球状の砂糖菓子を詰め込んで数珠のように繋ぎ合わせた作品「kawari dama」は、 もしなめていくとすれば中に詰められている砂糖菓子が姿を現して、このネックレスの楽しい一面を見せてくれます。
この作品は、従来の装飾品が持つ魅力的でエロチックな要素をさりげなく表現し、 奥深いところで芸術と応用美術との間を行き来しています。